第3話

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真夜中に、目覚めた。

闇の中にいた。



心と、体が震えた。

たった一人の、気がした。



誰かを、さがした。



でも、呼ぶことは出来なかった。



返事がないのが、怖かった。





隣のベッドには、



誰もいない。



その隣のベッドには、



誰もいない。



そのまた隣のベッドには





冷たい刃が 頬に触れた。

そして 喉元に触れた。





「貴様、何をしている……」



声。



「わたしに、何をするつもりだった。」



「……。」



「答えろ。」



声。



「……わたしの寝首を掻こうと思っているのなら、ばかな考えは捨てた方がいい。

 ……。

 答えろ!」



「……いない……」



「何?」



「……いない……の……」



「寝ぼけているのか、お前……」



「いない……の……」



「あの二人のことか? 大方、夜の散歩だろう。

 くだらん、とっとと寝ろ。」



冷たい刃が 離れた。



「いやだ。」



冷たい刃を みつけた。

つかまえた。

痛い。

血のにおい。



「わたしの剣! ……寝ぼけるのもたいがいにしろ! 指が飛ぶぞ!」



「ぃ……やなの。真っ暗……で……一人。……だれも、いない、の。」



目からたくさんの 水が流れた。

流れて 落ちた。



それでも 誰も 呼べなかった。



「声、とか。こわい……おと。それから……聞こえなくなって。

 それから……なにも、ない。」



「……。」



真っ暗な 場所にいた。



たった 一人の 場所にいた。



それから









「勇者。」



名前。



「……ぅ……」



手。



「わたしは、ピサロだ。」



名前。



「……ぁ……」



光。



「お前に闇を与え、孤独に陥れた、ピサロだ。」



知ってる声。

知ってる顔。

知ってる名前。



「ぅ、あ……わぁぁぁぁぁぁんっ!」



知ってる、ぬくもり。



「勇者!」



「いっしょ……いる……なくなって、ない?」



掴まえた。



「消したくは、ないのか。」



「ひとりは、やだ……やだよ……いっしょに……いてよぉ……」



掴まえた。



「憎しみは、ないのか。」



「うわぁぁぁぁんっ、ひとりに、しないで! なくなるの、いやだよぉぉっ!」



必死だった。



「…………人間とは、奇妙なイキモノだな、勇者。特に、お前は。」



闇の中で目覚めた。

そして 誰かが いた。

誰かが いた。



だれかが。



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