第5話

><




宿屋の扉が開いた。



勇者のベッドには、誰も寝ていなかった。



「ミネア殿、大変ですぞ!

 勇者殿の姿が……」



「ええ、どうやら、心配は要らないようですね。」



「え?」



勇者とピサロは、同じベッドに寝ていた。

二人には狭すぎたベッドの端から、ピサロの右手と勇者の左足がはみ出していた。

そこにはただ夜の闇に身を任せ、目を閉じて眠る、二人がいた。

敵意も憎しみも装いもなにもなく。



「勇者様に泣かれてしまいますね。

 朝、どう言い訳しましょうか?」



ピサロの文句も手ごわいですぞ。

 どうなだめますかな。」



ミネアとライアンはひっそりと微笑みあった。



空には深い闇。

深い闇にきらめく星。

既に町の灯りは小さくなり、世界が眠りについていた。





おわり


>